かんぴょうの基礎知識

干瓢とは・干瓢のルーツ

300年以上の歴史をもつ「かんぴょう」ってどんなもの?

干瓢のルーツから栃木県での干瓢生産の始まりについて

干瓢の特長

栃木県の干瓢は、全国生産量の98%以上を占め、本県の代表的な特産物です。 収穫は7~8月にかけて行われ、夕顔の実を紐状に剥き、真夏の太陽熱にて2日間にわたり干し上げた乾物食品です。 栄養的にもカルシウム・カリウム・リン・鉄分等が多く含まれ、加えて現代食生活に不足しがちな食物繊維も豊富なことが特に注目されています。

干瓢とは?

干瓢は、ユウガオ(ウリ科ヒョウタン属の1年生のツル性草木)の果肉を薄く細長くむいて乾燥させた食品のこと。 栃木県の生産地では、ユウガオの果実は通称「ふくべ」と呼ばれる。

干瓢のルーツ

ユウガオのルーツはヒョウタンと同じく、熱帯アジアや西アフリカと言われているが、西アフリカのサバンナには数種の野生のヒョウタンがあることからアフリカが原産と考えられている。日本への伝来は、紀元前6,500年頃と推定され、縄文時代の貝塚跡からヒョウタン皮が出土し、日本で最も古い史書『日本書紀』にも、数カ所に「ひさご」についての言及がある。

栃木県内では奈良・平安時代の集落跡からヒョウタンの皮が出土している。 日本で干瓢がいつ頃から作られるようになったのかは不明であるが、記録として古いのは15世紀中頃の『下学集』である。

山城国の木津(現在の大阪市浪速区敷津町、大国町あたり)、また別説では滋賀県木津村(現在の滋賀県蒲生郡日野町木津)が発祥の地と言われており、京阪では今でも干瓢を「きづ」と呼んでいる。

栃木県での栽培の始まり

栃木県に入ってきたのは、1712年、江州(現在の滋賀県)水口城主鳥居忠英(ただてる)公が、幕府の命により下野壬生城主に国替えになり、旧領地の木津からユウガオの種を取り寄せて、領内の村で試作されたのが始まりとされている。

それまでは、壬生の農産物は”牛蒡”、”竹の子”を中心としたものだったが、忠英公は農業振興の重要性を痛感して、郡奉行の松本茂右衛門に命じ、ユウガオの種を黒川の東西に蒔かせた。 そしてユウガオの栽培に成功したのが、藤井村の篠原丈助であったと言われる。 その後、栽培地域が上三川町、小山市、下野市(石橋町、国分寺町、南河内町)、宇都宮市、真岡市、二宮町、鹿沼市など栃木県の南東部に広がり、一大産地を形成するのに至った。

 

忠英公の前任地である水口は、東海道沿いにある宿場で、当時の様子は歌川広重が描いた『東海道五拾三次之内 水口 名物干瓢』で垣間みることができる。

忠英公と交代で水口城主に就いた加藤嘉矩(よしのり)公が、干瓢の優れた生産技術を壬生から伝え、水口干瓢繁栄の礎が築かれたという説もある。 栃木県でユウガオの栽培が広まった理由の一つは土壌が適していたことである。ユウガオの根は浅根性で横に広がり、深根でも40cm程度で、旺盛な成育に多量の水分を必要とするため、保水力のある土が必要である。根の発達のためには排水の良い軽い土が適しており、この条件に合った黒色の火山灰土が広く分布(関東ローム層)していた。

また気象条件に恵まれていたことも要因の一つと考えられる。干瓢の生産期7〜8月には、本県の夏の風物詩である雷雨により地表が冷やされ、暑さに弱いとされるユウガオの根の伸びを促す。また、その水分は、開花後わずか2〜3週間で収穫するふくべ(ユウガオの実)を太らせる恵みの雨となっている。

このように土壌や気象条件に恵まれたことに加え、農家の人々による不断の努力により、栃木県の干瓢生産は1970年代後半まで維持拡大を遂げ、栽培面積、生産量とも日本一(国内シェア95%以上)を誇る特産物に発展した。

 

干瓢の栄養成分表示

エネルギー 261kcal
蛋白質 7.1g
脂質 0.2g
糖質 37.8g
ナトリウム 3mg
食物繊維 30.1g
水分 19.8g
灰分 5.0g
無機質 カルシウム (漂泊)250mg
(無漂泊)375mg
リン 140mg
2.9mg
カリウム 1800mg
ビタミン B2 0.04mg
ナイアシン 2.7mg
E効力 0.2mg

「乾の状態」の「100g中」の栄養成分

野菜類の食物繊維量及びミネラル量の比較

野菜名 総食物繊維 カルシウム リン ナトリウム カリウム
かんぴょう 総食物繊維:30.1g カルシウム:250mg リン:140mg  鉄:2.9mg ナトリウム:3mg カリウム:1,800mg
ごぼう 総食物繊維:8.5mg カルシウム:49mg リン:60mg  鉄:0.8mg ナトリウム:6mg カリウム:330mg
ブロッコリー 総食物繊維:4.8g カルシウム:49mg リン:120mg  鉄:1.9mg ナトリウム:21mg カリウム:740mg
ほうれんそう 総食物繊維:3.5g カルシウム:55mg リン:60mg  鉄:3.7mg ナトリウム:21mg カリウム:740mg
春菊 総食物繊維:3.2g カルシウム:90mg リン:47mg  鉄:1.9mg ナトリウム:50mg カリウム:610mg
にんじん 総食物繊維:2.4g カルシウム:39mg リン:36mg  鉄:0.8mg ナトリウム:26mg カリウム:400mg
切り干大根 総食物繊維:20.3g カルシウム:30mg リン:22mg  鉄:0.3mg ナトリウム:14mg カリウム:240mg

「乾の状態」の「100g中」の栄養成分